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里親体験談

里親は子どもに「帰ることのできる場所」を与えられるから。ホッブス美香さん(東京都)

里親は子どもに「帰ることのできる場所」を与えられるから。ホッブス美香さん(東京都)

こんにちは!
今回は2003年から里親を始め、現在はファミリーホームを運営されている東京都在住のホッブス美香さんにお話を伺いました。

ホッブス美香さんについて

ー自己紹介をお願いします。

2003年から里親をはじめました。2015年からは、ファミリーホームを始め、里子5、6人を一度に預かっています。

 

里親を始めたのは東京都のA市だったのですが、3年ほど前にB区に引っ越してきました。A市の家は持ち家で、もともと里親をするつもりで建てた家ではあったのですが、ファミリーホームをするには手狭でした。そのため、夫の職場にも近いB区で新しく家を持つことにしました。

夫はアイルランド出身で、今は英語科学論文の指導、校正を仕事にしています。

美香さんの里親生活について

ー現在受け入れている里子さんは、どのようなお子さん達ですか?

いまは5人の子ども達、そして1人の措置外(※1)の女性と住んでいます。3人が小学生、専門学校のeスポーツ科に通う20歳の子、福祉系の大学に通う21歳の子の5人です。この子たちが里親のもとに居るのは基本的には18歳までなのですが、昨今その期間が延長される傾向にありますね。

また、もうすでに里子として預かる枠組みからは外れているのですが、24歳の子も一緒に生活してます。うちの子達は今までも発達に課題のある子が多く、世界的に見ると日本はまだ遅れているのですが、健常児よりも障害児の方が早く社会に出ることについて見直す社会の流れが世界的にあり、彼女はその福祉の枠組みを利用して、自立支援のスクールに行っています。

※1:児童福祉法(インタビューの2021年現在)では、社会的養護下での養育措置は原則18歳までとなっており、高校を卒業したら児童養護施設や里親家庭を出て自立しなければなりません。

措置延長として、「生活が不安定で継続的な養育を必要」と判断された場合は20歳まで、もしくは大学等就学中の場合は22歳までは継続して暮らすことが認められる場合もあります。

ー里親になったきっかけは何ですか?

もともと、親のいない子を育てたいという意思が昔から漠然とありました。35歳くらいのときに児童養護施設のボランティアに行き、そこで紹介された子が当時14歳で軽度の知的障害のある子でした。自分は障害のある子どもと関わるボランティアを当時ずっとしていたので、割とすんなり彼女を受け入れられました。

最初は日帰りで一緒にカラオケに行ったり映画に行ったりしていましたが そこから東京都のフレンドホーム(季節里親)を始めて、彼女を長期休暇の時など自宅で受け入れていました。

 

ほどなくして彼女がずっとうちに住みたいと言い始めて、そこで、施設から養育里親の制度について教えてもらい、興味を持ちました。その後すぐに里親登録をしました。

親のいない子どもを育てることに興味があり、関連する制度にはアンテナを張っていた私ですら養育里親制度については全然知らなかったのです。世間的にはあまり知られていない制度なのだと思います。

 

ー養育里親から、より人数の多い里子を受け入れるファミリーホームにステップアップした理由は何でしょうか?

フレンドホームで受け入れた子がうちに来たいと言ってくれていたのですが、中々実親からの許可が下りず、来られない子がいました。

制度上、養育里親で受け入れられる子は4人までなのですが、彼がようやくうちへ来られる状況になったとき、既にうちには4人の子どもがいました。

なのできっかけとして(ファミリーホームにステップアップした理由)は、彼を追加で受け入れられるようにするためでした。ただ、それはきっかけにすぎず、漠然とより多くの子どもを受け入れたいと思ってはいました。

 

ー障害をもっている里子を預かられていますが、なにか理由はありますか?また、受け入れてみて感じられたことはありますか?

 

社会的養護の子達の中に障害をもっている子は多くいます。ファミリーホームで受け入れている子どもの約4割がなんらかの障害をもっていると思います。この割合は児童養護施設にいる障害児の割合よりも高いですね。

中度以上の障害をもっている子だと、乳児院の先は障害児施設に行くことになります。うちで受け入れた障害のある子達については、うちに来なければずっと施設で育っていた子もいるかもしれません。

 

その子達にとって「パパ」や「ママ」と呼べるような人ができることは

とても良いことだと思うし、こちらとしても非常にやりがいがあることだなと感じています。

ー里親制度はあくまでも子どものための制度で、
子どもを大切にすることが第一義的にはあるとは思うのですが、
里親やその家族にとってはどのような制度だと思われますか?


私には実子はいないのですが、周りの実子がいる里親を見ていると、実子との相性で大変な思いをされた方もいらっしゃいます。逆に、実子から「弟や妹が欲しい」と言われて里子を迎える決心をされた家庭もあります。 今まで語られてきていない分野だと思います。

これからの里親制度では、里親家庭の実子に対するケアについても考えるべきだと思います。日本ではまだまだ里親制度の中の実子に関するケーススタディは乏しく「こういうケースだと、どうなるのだろう?」というデータの蓄積が必要かと思います。 皆、ぶっつけ本番で里親にならざるを得ないのですが、私自身、里子達を迎えることで私の人生はとても豊かになりました



ー夫や親戚といった周囲の人への影響はいかがでしょうか?


うちの場合は夫が外国人なので、周囲の人が我々夫婦と里子を見て、血縁関係ではないことは明らかにわかっていたと思います。9割方の人が「なにか手伝うことがあったら言ってね」など好意的な言葉を下さいました。

里親になって思うのは、人ってこんなに暖かいのだ、ということです

マイナスな態度がゼロとは言えませんが、プラスのサポートの方が圧倒的に多いです。


家庭内については、里親になる夫婦は大体どちらか片方に、里親になりたいという強い意思があることが多い印象です。もう片方は後からその熱意にほだされていくような形ですかね。

私の場合、自分の家族には一定程度の理解は求めましたが、その他の親戚からの声はあまり意識しませんでした。とにかく、この里親制度というのが社会的に必要であり、そしてとても価値があることなのだと思っていました

(写真はホッブス美香さんご提供のもの)

ー周囲の方からのマイナスな意見、里子の受け入れを反対される理由は?


子どもを育てることにはもちろん責任が伴うし、社会的養育にいる子にはその背景にいろんな理由があり、それを含めて丸ごと受け入れることができるかの不安があると思います。非常に辛い経験を持つ子どももたくさんいますから。

ただ、逆にいうとそういった事実を受け止めて、子どもを育てるというのは非常にやりがいがあることです。日本は社会的養育が必要な子どもの数自体は少ないものの、そのような状況にいる子たちが抱える問題は非常に重いものが多く、私自身、そういった社会課題についての気づきがたくさんありました。


ーこんな人は里親に向いている、という特徴はありますか?


なんでも一人でやろうとしたり、格好つけたりする人は向いてないかもしれません。

里親として、辛いときは辛いと周囲に助けを求めることができる人が向いていると思います。

私自身、先輩の里親達にたくさん相談してきました。社会的に意義があることに関心がある人や、好奇心が強い方、数が少ない存在に気持ちを寄せられる傾向のある方が向いてると思います。

あと自分自身も少数の側になることを恐れない人は向いているでしょう。

ー里親をされていて、印象に残っていることはありますか?


まだ20年経っていないので、あと10年ほどすると里子達も大人に成長し30歳あたりになったら、「あのとき受け入れてよかったな」と思える日が来るのかなと思っています。

幼い里子の場合は、おそらく実子の子育てと同じで、私たち里親と関わる中で言葉が増えてきたり、最初に「ママ」って呼んでもらえたり、信頼してくれて表情が明るくなってくれたりすると嬉しいですね。

もう10年以上前の話になりますが、当時10歳の子とうまくいかなくなり措置変更になったことは大きな出来事でした。小学校の卒業式は夫婦で参列できたのですが、以後全く会えていません。


ー現在5人のお子さんを受け入れているとのことですが、かなり忙しく大変なのかなと想像しています。いかがでしょうか?


ファミリーホームはスタッフを雇うことができますので、例えばその方にお料理やベビーシットをお願いできます。また、子どもの内でも年齢の高い子が幼い子の面倒を見てくれたりもしますね。

朝の準備と送り迎え、夜の時間帯は大変ですが、他の時間帯は人の手を借りつつうまく回している感じです。

ー里子を卒業し、自立したお子さんたちとのいまの関係性は?


以前うちにいて、現在22歳の男の子は、お盆やお正月に帰ってきてくれますね。また別の子で、頻繁に顔を見せてくれるというよりは手紙や電話でやりとりしている子もいます。

施設には施設の役割があるけれど、里親家庭は「実家」になれるというのはすごく大きな役割だと思うし、里親の長所だと思います。


ー里子が里親家庭を出て自立していくときに、経済的なサポートもしますか?


東京都の場合は、里親から自立するときにある程度まとまったお金が給付されます。しかし、そういった給付があったとしてもやはり大変だと思います。学費なども立て替えたりしてきました。

すべてが返ってくるわけではないのである程度の負担も発生します。これから我が家も二人程立て続けに自立の時期を迎えますので、できるだけのサポートは考えています。

ー東京都だとフレンドホームという季節里親のような短期受け入れがあり、

仕事があり実子もいる里親希望者にも向いていると思うのですが、いかがでしょうか?


里親登録をしなくともフレンドホームにはなれます。直接施設に登録する形です。

フレンドホームをやっているかどうかは、近場の施設に直接聞いて確認する必要があり、施設の方針でやっていないところもあります。


子どもに必要なのは「家庭のような」体験ではなく「家庭」なので、どのようにフレンドホーム制度を活用するかはなかなか難しい課題もありますね。

ー複数の子どもの里親をされている美香さん自身に、自由な時間はありますか?


学校や幼稚園に行っている時間は自由ですよ。

週に4回、放課後には学童(放課後デイサービス)もあって、夕方は18時くらいまでそこにいられます。幼稚園には延長保育もあります。

そういった制度に頼らなないと、特に障害のある子を複数受け入れる場合は中々大変だと思います。

(写真はホッブス美香さんご提供のもの)

これから里親を目指す人へのメッセージ

ー今後、どのような方に養育里親やファミリーホームをやってほしいと思いますか?


基本的にはこういった事に意義を感じる方にやっていただきたいです。
そして、子育て中の若いママ、子どもが巣立ってまだまだ元気なシニア世代にもお願いしたいです。

今後は乳幼児専門の短期里親なども必要となります。

実親へしっかり帰るまでお預かりする里親も必要ですね。

里親に興味のあるRACメンバーとのQ&A

RACメンバー(以下R):なぜ養育里親やファミリーホームはハードルが高いと感じる人が多いのでしょうか?


美香さん:まずはそういった里親制度について、養育費がもらえるなどの詳細を知らない方は多いです。ですが、たとえ知っていても、やはりまだハードルが高いと感じる人が一定数いらっしゃいますね。

逆に私から伺いたいのですが、どのようなところにハードルを感じられますか?

R:私は実子が2人いて、下の子がまだ0歳なのであと3年くらい経ったら里親も考えられるかなと思っています。一方で、フルタイムで仕事をしていてその仕事が好きなのですが、繁忙期は帰るのが遅くなることもあるし、仕事をしつつ、実子と里子の3人の面倒を見られるかなというのは不安ですね。なので、まずは週末里親やフレンドホームのような、自分に余裕があるときに短期で受け入れられるものから始めるのが良いのかなと思っています。

美香さん:そうですね、実子との兼ね合いはありますよね。

R:私自身が3人兄弟でして、3人いてすごくよかったなと思うことが多いです。一方で、私が2人目の妊娠のときに、仕事と子育てをしながら妊娠生活を過ごすというのがとても負担が大きく、自分で3人目を産もうというのはもうあまり考えてないです。なので、3人目の兄弟として里子さんを迎えてみたいなという気持ちはあります。実子2人に大人になってからもうひとり相談できる相手がいるのは良いですし、また、迎えた里子にとって、私の家が「帰ることのできる場所」になったら素敵だなと思っています。ただ、こんな自分や自分の家族本位な理由で里親になって良いのかなと悩んでいます。

美香さん:「二人目が欲しくて」「三人目が欲しくて」といった方はいらっしゃいますね。ご夫婦、お子さんとよくお話しして進められたらいいですね。

子どもに「帰ることのできる場所」を与えられる里親になるのはとても素晴らしいことだと思います。家族本位だとは思いません。

R:里親をする中で、具体的にどのような方に、どのような助けを求められていますか?

美香さん:一番シンプルなのは、里親仲間、先輩につらいことや愚痴を聞いてもらうことですね。また、習い事や地域の活動でお世話になることも多々ありました。里子の中に野球をやっている子がいたのですが、地域の野球チームに入っていました。

最近では、児童相談所も様々なサポート体制ができています。

例えば都内には「児童虐待防止センター」もあり、里親子のサポートも色々あります。

R:子育てをしていると、自分の住んでいる地域や自治体に興味を持ちます。

美香さん:地域の方々には本当に支えてもらったなと感謝しています。

皆さん、こちらからお願いする前に助けの手を差し伸べて下さったし、

私が里親をしていることを知ると、何かしたいと思ってくださる方は多かったです。

***

里親をするからと言って自分たちだけで子どもを育てようとするのではなく、地域の方や里親の先輩方に助けを求めていくことが大切なんですね。

子どもに「帰ることのできる場所」を与えられる里親は素晴らしい制度だと改めて感じました。

ホッブス美香さん、今回はお話を聞かせて下さりありがとうございました。

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