里親体験談
里親になることのハードルを上げないで 安藤茎子さん(東京都) #里親体験談 (2/2)
前回に引き続き、安藤茎子さんにお話を伺いたいと思います。
今回は、東京都豊島区のショートステイ事業についてと、実際に里親制度を利用してみての気づき、
里親に関して質問にお答えいただきました。
安藤茎子さんのプロフィール:
東京都豊島区在住。1999年に東京都で里親登録をする。その後、特別養子縁組、養育里親、フレンドホーム、ショートステイの担い手として活動。
始めたのは10年以上前だと思います。正式名称は「子どもショートステイの協力家庭」です。豊島区の場合は里親経験や、ファミリーサポート援助会員としての経験があれば協力家庭に登録できます。これからはぜひ、ファミリーサポートの経験者が登録してほしいなと思っています。
豊島区の児童相談所が2022年10月に建物が完成し、2023年1月開所するので、里親登録が東京都から豊島区に移るので、そのタイミングで里親家庭も、できればショートステイの登録をしてほしいですね。子どもの社会的養護については、各制度が横でつながってほしいなと思っています。
今年嬉しく感じたのが、ファミリーサポートの援助会員になるのに、里親家庭であれば研修の一部のみの参加で良いとされていたことです。それによってかなり登録が楽になった印象です。
突発的な依頼は、契約している施設や乳児院に行くようで、うちの家庭にくる依頼は、あらかじめ割と先の予定(2,3週間前)として決まっている依頼が多いです。
例えば、冬休みに母親が検査入院をするのでその間ショートステイで預かってくれないか、とか。ただ、事前に準備することってそんなにないですよ。
平日も含んだステイの場合は、保育園や学童に行って普段通りの生活をしてもらうようにしています。その方が、子どもにとっても落ち着く環境になると思いますので。そうすると夕方にうちの家庭に帰ってきて、ご飯を食べてお風呂に入って眠るだけなので、子ども達も新しい家で戸惑うような時間がなく、負担も少ないと思います。週末は、一緒に遊ぶことを考えたりはします。
(写真はイメージです)
コロナウイルスの影響で、最近は近隣の公園くらいしか行くことができないですね。幼い子であれば、家の中でゆっくり過ごしてもらうことも多いです。そのときは、夫が自分で考えて100円ショップで買ってきたおもちゃなんかを使って工夫して遊んでくれています。
里子の中には、里親(育ての親)に実親(産みの親)のことを聞くと、里親に何か不満があると捉えられるのではないかと心配して、実親のことを聞きづらく感じる子がいるようです。年齢が高くなるほどその傾向がありますね。
里子が高校生くらいになると、勉強や部活など他に話すことはたくさんあるので、意外と自分の生い立ちについて自然に聞けるきっかけが無いのですよ。本当だったら、例えばおつきあいする恋人ができたようなタイミングではしっかり話す必要があると思うのですが。
一方で、施設・里親家庭で暮らす高校生の子供には、自立支援プログラムに参加することができます。プログラムの中で自分の生い立ちについて話すことがあり、参加者同士の交流もあります。養子についても同様のプログラムがあっても良いのではないかなと思っています。
2019年に、特別養子縁組の対象年齢が15歳に引き上げになりました。それに伴い、それまで養育里親家庭で暮らしていた里子についても特別養子縁組ができるのは17歳までとなったのですが、特別養子縁組に切り替えるケースが少ないのです。
理由としては、里子だと国や自治体からもらえる支援金や奨学金が、養子縁組をするともらえなくなってしまうのです。ですので、高校生時点で里子だった子を特別養子縁組にしたという話をほとんど聞きません。里子からも、「このタイミングで養子縁組にならないと、もうずっと養子にはなれないのか?」という質問がよくあるそうです。特別養子縁組でなく普通縁組であればできると知ると、では今でなくても良いと思うようです。
子どもにとって、特別養子縁組と普通縁組の違いについてはわかりづらいので、里子向けのプログラムを作って、この違いやメリット・デメリットについても話す機会を設けてほしいなと思っています。
里親というと長期で預かるというイメージがある人が多いのですが、短期もあるし、子どもショートステイもあるので、関心のある人はまず短期の制度からチャレンジしてみるのが良いと思います。自分で里親になることへのハードルをあげて考えないで欲しいです。
別の取り組みで私がフードバンクなどをしていると、その家庭のご両親が短期里親や子どもショートステイの制度について知らないことが多いのです。知っていれば、ご両親が資格試験や入院の際にも、前日の夜から利用することだってできるのに。
また、自分自身が施設出身の方や、外国人の方も、地域の子育て支援について知らない人も多いので、とにかくこれらの制度についての認知度がもっと上がって欲しいです。また、知っていたとしても、「自分が使っていいのだろうか」と尻込みする人も多いですね。そのような人たちに、「安心して、使っていいよ」と伝えてくれる人がもっと増えて欲しいです。
はい、当時は夫婦のどちらかは専業主婦もしくは主夫でなければいけなかったので、辞めないといけなかったのです。現在は共働きでも良いとなっています。当時は里子の保育園入所も、二重養育になるので禁止されていましたが、今は入園可能です。なので、制度は変わってきていますね。
フレンドホームや子どもショートステイだと、一泊二日からなのでハードルは低いと思っています。
しかし、フレンドホームは、受け入れている家庭同士の横のつながりも研修もなく、施設の状況も全く知らずに預かることになっています。例えば、施設では順番にお風呂に入るため、年齢によっては、ご飯前にお風呂に入ることもあったり、一度食卓に出たご飯は廃棄されることになっていたりと、家庭とは少し違った感覚を持っている子も多く、家庭に来たときにトラブルが起こることもあります。ですので、そういった施設の様子について知ることができるような研修があると良いなと思っています。
安藤茎子さん、今回はお話を聞かせて頂きありがとうございました。
実は安藤さんはRACの第1回目のイベントのときにゲストできていただいたことがあります。その時のイベント報告がありますのでよければ御覧ください。
PDFでのイベント報告書は以下になります。
子どもを預けたい方が安心して各制度を利用できるように。また、ショートステイや里親に関心のある方がご自身でハードルをあげずに済むように、いろんな方の経験談や各制度について今後も情報発信できたらと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。