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里親体験談

里親さん自身が相談できる人はいますか?一緒にもっと専門家に頼ろう!【自立援助ホーム①】

里親さん自身が相談できる人はいますか?一緒にもっと専門家に頼ろう!【自立援助ホーム①】

1.本日のインタビューのきっかけ

本日は、自立援助ホームのホーム長である、小林努さんにお話を伺いました。

(写真は小林さんご本人)

RAC:

実は「自立援助ホーム」(通称:じえん)という名前は聞いたことがあるものの、

建物の見学に行った程度で、どんな場所なのかよく知らずに過ごしていました。

するとある時、”里親家庭を出た子どもたちが、自立援助ホームで生活することも結構ある” ”じえんは最後の砦らしい”という話を聞き…

というわけで、今回は自立援助ホームってどんなところ?里親と比べて何が同じ?違うの?という観点で質問をたくさん投げさせていただきました。



(写真は小林さん提供)

https://chabonavi.jp/place/603



2.自立援助ホームってどんなところ?

RACーーーではさっそくですが、自立援助ホームは、「なんらかの理由で家庭にいられなくなり、働かざるを得なくなった20歳までの子どもたちに暮らしの場を与える施設」とされています。

どうして小林さんは児童養護施設の職員を長年経験されてから、今の自立援助ホームへ職場を変えられたのでしょうか。



小林さん:

「児童養護施設は小規模化や、その他いろんな制度改革が起きてますね。

一方で自立援助ホームは(ほかの社会的養護の制度に比べると)最近できた制度で、認知度も低い現状があります。

開設に関しても届け出制で認可が下りたりとハードルが低い分、逆に自由度が高いところがあり、今までの児童養護施設で経験した私からすると新しくやれることがたくさんある場所だなと思い、こちらを専任にして働く形にしました。」

ーーー実際に数としては、自立援助ホームはH25年に113か所だったのが、令和2年には217か所、2倍ほどにまで増えてますね。

「そうですね。児童養護施設等をでて、行く場所がない若者に対して、

家に帰ったり、無料低額宿泊所(*2)に行かせるよりは自立援助ホームのほうがいいかな、という考え方もあるのかもしれません。」

ーーーなるほど。そういった意味でニーズも高く、やはり「最後の砦」といわれる感じはありますね。

3.入居者の属性が多様であり、スタッフも全員が専門職ではない中・・・自立援助ホームの中で気を付けられていることはなんでしょうか?



ーーー自立援助ホームに入居している若者の、家庭からの入居が43.3%、児童養護施設など、他の施設等からの入居は36.5%。また、約5%は里親家庭からという内訳をみて驚きました。

また”スタッフ全員が福祉専門職であるわけではない”という中で、理想と現実にギャップがあると思います。

こういろんな環境からいろんな若者が来ると、ルール作りをするのは大変そうですが、どういうことに気を付けながら運営されていますか?

子どもとの話し合いがベースの上ですが、閉ざされていない関係性、

そして閉ざされていない場所を目指しています。

子どもに情報を提供するか、承諾を得ながら、情報を共有します。こどもが拒否した場合は、共有しません。

(その上で承諾を得ていれば)学校に行っている子には学校の先生とも共有しますし、働いている子も職場と情報共有をします。児童相談所ともですね。

(閉ざされていない場所というのは)具体的には、いろんな人が来てくれる場所を目指しています。

例えばボランティアさんが来るのもそうです。ボランティアさんが誰か入所者の子に『~~したほうがいいよ』と言ったりしますよね。

それに対して、子どもがそうか、と思って実行して。不利益を被ったとき。

困った結果になったのはボランティアさんのせいじゃなくて、自分で判断したんだよね。今ここ(自立援助ホーム)にいる間に失敗できてよかったよね、

というのも閉ざされていない場所だから出来る事だと思っています。

ルールについては、門限と消灯時間ぐらいです。

 

他者の権利侵害は認めませんが、それは自分の権利も守られるということです。

ルールよりマナーを大切にしています。

RAC---そうですね。

自分が大切にされる経験は非常に大切だと思います。また失敗も成功も、経験ができることに加えて、「そのあとどうだった?どう思った?」と振り返り意味づけがしっかりできる、話がゆっくりできるのは、里親さんも同じ強みだなと思います。

4.子どもが複数人いるからこそ大切にしている事は?

ーーー複数人が同時に生活を共にするという意味で、児童養護施設との共通点もあるかなと思いますが、複数人いるからこそ大切にしていることはありますか?

「児童養護施設のような、集団生活をさせようとはしていないんですよ。

食事も、一緒にいただきますをする、というようにはしていません。

生活も、昼間に学校に行く子もいれば、夜間に行く子もいるし、仕事をしている子も内容によって時間帯が違うので…

イベント時、例えばクリスマスとかでもパートナーと過ごしたい子もいるし、いろいろですよね。なので強制参加のイベントは全くないです。

そこは施設との大きな差で、良いところだと思っています。



でもだからと言って、”孤食”は嫌いなので、必ず職員は台所にいるようにしています。ご飯を食べているときに、一人にならないってことを、すごく意識しています。

みんなを仲良くさせようとすると、仲良くならないんです。でも、そうしないので自然とみんなが仲良くなるんですよ。(笑)」

ーーーたとえるならば、”学生寮”に近い感じでしょうかね?

「そうですね。今(の入居者)は働いているお子さんが多いので、会社の所有するアパートの管理人さんにも近い気もします。実際の管理人さんよりは(関係性は)近くて、いろんな相談をする相手、という立場でしょうか。」



ーーーそんなに相談にのると、うまい距離間を保てなくなるというか、

線引きが難しいって事はないんでしょうか。

「一緒には住んでないのと、交代制でメンバーも変わるので、里親さんほど線引きが難しくなることはないかなと思っています。」

ファミリーホームや、小規模の児童養護施設に近いところもありますね。

5.スタッフ間でのコミュニケーションはどうとっていますか?



ーーー交代制だとスタッフ全員が集まるタイミングは少ないですよね。

どうコミュニケーションをとられていますか?

「職員全員が集まる機会は少ないですね。

ただ、私がホーム長という立場であるがゆえに、直接(意見)は言いにくい・話しにくい人もいるとおもうので…

それぞれ日々の気づきを、引継ぎで共有し、各々が考えて広げていくという風にしています。」

ーーーちなみに今はどういうスタッフが働かれていますか?

「現在は正社員3人、パート2人、あともう1人は今後正規職員で入る予定です。

福祉職出身の方もいますが、(いろんな仕事を経験して)中途採用で入ってくれるスタッフが自立援助ホームには多いです。

働いた経験があってスタッフとして入ってくれるのは強みで、

子どもたちと仕事の話ができるのはとっても大きな存在だなと思います。」


色んな福祉の仕事以外の経験があるのもこういうところで生きてきそうですね。

6.「自立援助ホームは、スタッフさんが退所後にも相談にのってくれる」と聞きますが、実際はどうですか?

ーーー社会的養護では、特に「施設を出た後」が大変といわれます。その時の生活面での困りごとや、けがや病気の相談相手など十分にないまま、社会に出ていく若者も多いといいます。

(自立援助ホームだと)むしろ退所後のほうが関わりの時間が長いので、そちらのほうが大事な時があります。

ーーー相談が来たら対応する?という形でしょうか。

どこまで関わっていらっしゃいますか?

もちろん、その時の子どもの状況によりますが、何も連絡がない時にこちらから連絡するときもあります。

ーーー里親家庭を出た方は、里親さんにアクセスしやすいようにある程度近くに住んでいる方もいます。近くに住む子はおおいでしょうか?

みんなその時のお仕事によりますね。近くに住んだりする子もいますよ。

仕事の都合で遠くに住む子もいますし、いろんな子がいますね。

ーーー実際に自立援助ホームを離れて生活しだしたときも、中で生活しているときもなのですが…自分から頼れる先を作れない、話したいことを話せないって若者もいると思います。どうやってお子さんとの話を聞き出していますか。向こうの言葉を待っていますか?

関係機関と頻繁に話をするのも、話を聞くための一つの手段かなと思います。

例えば学校から『〇〇について、聞いてみますね』と連絡がきたり。そういう点はうちのホームはうまく連携が取れているかなと思います。

他にも職場から『こういうことで叱りました』等の連絡が来ます。

ただし、職場からは関わりすぎないようにしていますね。誰かだけが特別扱いになってしまわないように、バランスを見ながらやってます。

7.自立援助ホームのスタッフは保護者ではない?里親さんとの違いや、里親さんに期待することはありますか?

ーーー保護者というわけではないのですが、どういう立ち位置で外部の方は、自立援助ホームのスタッフさんを受け止められているんでしょうか?

私たちは保証人にはなれないんですけれども、”保護者”的な立ち位置になりますね。

世話人みたいな感じですね。”プロの世話人”みたいな感じです。

おお、なるほど。わかる気がします。

私の知り合いのとある里親さんも「里親はある意味、”プロ家族”なんだよ」と話していました。

そういう意味では里親さんも、もっと自分たちだけで全てを抱えすぎずに、専門性のある人に相談してチームで養育できたらいいですよね。

どうしても「里親」だから自分たちで決めないといけないとか、多方面の全ての責任を抱えがちなのですが、、、里親だからこそ客観視が必要な時もあって。

どうやってお子さんをサポートしていくか、その体制をキープしていくのかなど、もっと専門職と連携していけたらいいですよね。

ちなみに自立援助ホームには里親家庭を出たお子さんも来るので、良かったら実際に見てもらいたいなと思います。

里親の研修では、乳児院や児童養護施設には行くと思うのですが、自立援助ホームには来ないんですよ。そういった意味でもし見学やボランティア・スタッフとして来てくださったら、「里親家庭を出た後に何に困るのか?」というのも実体験として見れるかなと思います。実際にうちのホームにも、週末里親さんをされている方が来てくださっています。

 

里親さんはもっと増えてほしいなと思っています。

里親さんの良さが確実にあって、その子に合ったところが絶対にあるのでその選択肢を増やしたいんです。

でも里親さんは個人で動かれているところもあって、社会の中で見るとどうしても弱くなってしまうんですよね。レスパイトが頼めるのか、里親支援員や児童相談所、地域の児童養護施設と連携できているのか・・・そういう点でもっとサポートが増えて「里親をやろう」と思ってくれる人が増えたらいいですよね。

小林さん、貴重なお時間をいただきインタビューに答えていただきありがとうございました。

後半はこちらから。

https://www.shortstay-satooya.jp/info/experience/20230214_jien_2.html

このインタビューにはお話いただいた一部しか載せられなかったのですが、

一貫して「里親さんも一人で悩まないでくださいね。私達も関係者や専門家をどんどん頼っていますし、だからもっと里親さんも頼っていい。」というメッセージがひしひしと伝わるお話でした。

社会的養護・養育の分野で子どもさんの生活に直接関わるという仕事はたくさんありますが、「生活面から関わる」という観点でとても勉強になりました。

里親に興味がある方や、里親登録はしたけれど未委託の方、まずはボランティアから始めたいなと言う皆さんにも、ぜひ自立援助ホームの選択肢も思い出していただけたらと思っています。

(インタビュー・文責 千葉 2023年2月14日)

お問い合わせはこちらへ

https://chabonavi.jp/place/603

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